アズキナシ

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  中学校へ行こうと玄関の扉を開くと、チラチラと白いかけらが目の前を横切った。 なんだろう。雪……? 一瞬そう思って、しかしすぐにかぶりをふる。 いくら北海道とはいえ、初夏の六月に雪が降るわけない。 ……じゃあ、今のはなんだろう。 首を傾げ白いかけらを追いかける。 手を伸ばし捕まえようとしたけれど、風に乗った白いかけらは、まるで僕をからかうようにひらひらと揺れ逃げていく。 一面に広がる柔らかい牧草に足をとられながら駆けていると、小さなつむじ風が吹き、舞い上がった白いかけらが視界から消えた。 見失ってしまった。 あれがなにか、気になったのに。 しょんぼりと肩を落とすと、後ろからクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。
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