アズキナシ

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  「千秋、高校どうするか決めた?」 運転席でハンドルを握る姉が、前を向いたまま聞いてきた。僕も窓の外を眺めたまま、無言で首を横に振る。 「牧場の仕事を手伝う気があるなら、地元の農業高校を受けてみたらいいと思うよ」 「いやだよ」 「じゃあ隣町の公立高校?」 「そんなの、まだわかんない」 僕が不機嫌さを隠さずに姉の言葉を遮ると、困ったように小さく笑う。 ふっくらと白い頬と長いまつげ。もう二十代も半ばなのに、いつまでも無邪気な少女のような彼女の横顔を盗み見て、ため息をついた。 右も左も延々と続く放牧地。木の柵で区切られたその場所で、馬がのんびりと草を食む風景はとてものどかだ。 僕はここで産まれ、ここで育った。 姉だってそうだ。そして彼女は結婚してここで暮らしていくことを決めた。 そこに、なんの躊躇いも疑問もなかったんだろうか。
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