誕ジョウ日 お目デとウ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
私は困惑する。 私の目の前には私と同じ顔。けれど服装も髪型も化粧の仕方も全く違う『別人』がいる。 「貴方は誰?」 『貴方ハ誰?』 写し鏡のように言葉も返され困惑は増す一方。 だれ、誰なの? 「私は…」 そこで言葉を詰まらせる。思い出せない、私の名前。 私は………誰? 『ワタシハ貴方』 「え?」 『ワタシガ貴方』 「何を…言っているの?」 『貴方ハモウ…要ラナイノ』 「ひっ!」 何処から出したのかは分からないけれど、目の前にいる彼女の手には刃先の長い包丁が握られていた。 逃げたくても竦んで動けない。誰か、助けて!誰か!! 『貴方ガ消エテ、ワタシガ貴方ニナルノ』 そう口紅で赤く染まる唇を三日月に歪ませて微笑む。その三日月に視線を囚われている間に風を切る音が耳をつく。 そして私の意識はそこで途絶えた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加