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私は困惑する。
私の目の前には私と同じ顔。けれど服装も髪型も化粧の仕方も全く違う『別人』がいる。
「貴方は誰?」
『貴方ハ誰?』
写し鏡のように言葉も返され困惑は増す一方。
だれ、誰なの?
「私は…」
そこで言葉を詰まらせる。思い出せない、私の名前。
私は………誰?
『ワタシハ貴方』
「え?」
『ワタシガ貴方』
「何を…言っているの?」
『貴方ハモウ…要ラナイノ』
「ひっ!」
何処から出したのかは分からないけれど、目の前にいる彼女の手には刃先の長い包丁が握られていた。
逃げたくても竦んで動けない。誰か、助けて!誰か!!
『貴方ガ消エテ、ワタシガ貴方ニナルノ』
そう口紅で赤く染まる唇を三日月に歪ませて微笑む。その三日月に視線を囚われている間に風を切る音が耳をつく。
そして私の意識はそこで途絶えた。
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