289人が本棚に入れています
本棚に追加
第3 妻
《…ぃ、…きろ、》
「んっ…」
誰だろう…
呼ばれ、てる?
おきなきゃ…
でも、まだ眠たい…
《おきろ》
「っっ!」
その男の声で、オレの意識は一気に覚醒した。
「ぁ…」
《おはよう》
「お、おはようございます…」
目の前に魔王の顔が広がっていた。
起き上がろうとすると、身動きが取れないことに気づ
く。
見ると、魔王の腕がオレの腰をがっちりとホールドし
ていた。
「あ、あの…腕、どけてもらえないでしょうか?」
《何故?》
またこの顔。
昨日もオレに見せた、少し悲しそうな顔。
「えっと…動けないから、です」
《……》
何故か不服そうだけど、こればっかりは仕方がない。
…というか、オレ奴隷だよな?
何でこんな良い扱い(良い扱いかどうかわからないけ
ど)されているんだろう?
《そういえば、名前聞いていなかったな》
「名前…ですか」
奴隷なのに名前なんて必要なんだろうか。
まあ、従うけど。
「紫苑です。高原紫苑」
《シオンか…
良い名だな。
お前に似合っている》
「ありがとう、ございます…」
そんなこと言われたのは、初めてだ。
今までずっと女みたいって言われてきたからな?
「…貴方は?」
《…?》
「貴方のことは、なんて呼べば良いんですか?」
《!…やはりお前は面白いな》
最初のコメントを投稿しよう!