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「ゲホッ、コホッ」
町外れの小さな休憩所に咳き込む一人の青年。その咳き込みを聞いた一人の少女が青年へと近付く。
その少女は背に肩幅より少し小さめな木箱を背負っている。
「お兄さん、風邪?」
「あぁ、町で流行り風邪のようでね」
「風邪にとってもよく効くお薬が有るけど、買いませんか?」
「…薬師のお嬢さんか。なら、俺の分を一つと知り合いにもあげたいから幾つか売ってくれるかい?」
「有難う」
黒髪をお下げにした少女はにこりと微笑み、背負っていた木箱から薬を幾つか取り出した。
「お嬢さんは家の人の手伝いかな」
「この年齢では…珍しいですか?」
「15にも満たないように見えるからね、聞いてみただけだよ」
「ふふ、お手伝い」
「そうか、有難う…助かるよ」
青年はお金と引き換えに薬を受け取ると手を軽く振って家路に就いた。少女はにこにことした表情のまま手を振り、降ろした木箱をもう一度背負うと歩き出す。
「効果は直ぐ…直ぐですよ、お兄さん」
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