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序章 転機
人生の転機というのはいつ来るのか分からないものだ。
まあ、分かってたら当然身構えてしまうし、そもそもそれが自分にとって都合の悪いことなら誰だって止めに入る。
だが、それを防ごうとして、自分の許容できるものにしてしまったら、それはもう転機ではない。
転機というのは、自分にとって何か大きなものが変わることを示しているはずだから。
なら大抵の場合、人生の転機というのはやはり、突然来るものなのだろう。
そしてそれは、時に人の積み上げてきた人生を壊してしまうことだってある。
だからきっと、今俺が見るこの光景はまさしく、俺という一人の人間の人生を大きく変える出来事なのだろう。
「恭介君!」
遠くで、聞き慣れた少女の声が聞こえた。
声に振り返ると、突然スポットライトのような光が俺の体を包んだ。
視界は真っ白で、遠くからは花火を打ち上げる音と、人の喧騒が耳に届く。
「……あ」
そして、光の正体に気が付いた俺は短く声を漏らした。
盛大に打ち上げられる花火は大きな音を出して夜空に花を咲かせる。それと混ざるように何かが壊れる音が明るい夜の街に響いた。
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