第三章 交錯する記憶

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 御島は探るようにしてもう一度質問した。  自分で振っといてなんだが、この話題についてはあまり深く突っ込まれたくない。  自分が記憶喪失だと知ったら気を遣われてしまうから。  俺は少し考える時間を稼ぐように、パンを一口食べる。 「本当に大したことじゃない。ただ……ふと桜が見たくなったってだけ。あんまり気にすんな」  突き放すように言うと、今まで黙っていた椎名が突然バンッ! とテーブルに手をついた。  ギョッとして俺達の視線が一点に集中すると、椎名の口元がニヤリと歪んだ。  俺はそれを見た瞬間、考えるより先に動いた。 「くっ……」  だが、それは読んでいたと言わんばかりに居間から出ようとする俺の足元に椎名がまとわりついてきた。 「何処へ行くんだい? これから詳しく話そうと言うのに」  こちらを見上げる顔は何故かしたり顔だ。 「俺から話すことはないですよ! 良いから離してくださいよ!」 「そうですよ椎名先輩。じゃれるなら部屋に戻ってからにしてください」 「それ、助けてねぇよ御島! 助けるならちゃんとやって!」 「ごめん無理。標的にされたくないし」 「即答ですか……」  必死で引き剥がしながら助けを求めるも、御島は関わりたくないのかこちらを向かずに答える。     
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