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「…っ!…んーーーっ!美味しいっ!すごく美味しいよっ!都築くん!」
ふわふわで、出汁の味も丁度良くて……私じゃこんなふうに作れないっ!
「そう……良かったな…」
真横に座ってた都築くんは、言葉こそ素っ気ないけど、すごく優しい笑顔を、私に向けてくれた。
……は……反則だからっ!
その顔は……
都築くんから、顔を逸らして黙々と食べる。
でも、新しい料理を口にする度に、歓喜の声が漏れる。
「たくさん、食べな……たくさん食べて呑んで……嫌なことは、忘れればいい……っと…余計な事言ったな…まあ……二日酔いで潰れても、明日休みだし……問題ないだろ…」
……『嫌なことは、忘れればいい』……何かあったか、聴かないのに……気付いてくれてたの……?
箸を受け皿に置く。
「…どうして……探しに来てくれたの?」
「惚れてる女、心配したら駄目か?」
……そうじゃ……ないけど……
「……雨の中…あんな顔して歩いてたら……何があったかくらい、分かる……それに……」
都築くんが、私の首筋に手を伸ばす。
都築くんのひんやりした指先が、触れて…肩がピクっと反応する。
「…ここ……跡付いてる……昨夜夏にも付けられたんだろうけど……あいつなら、見える所にしないだろ?」
……その指摘に……何とも言えない気持ちになる。
もちろん……顔も赤くなるけど……29年間処女だったのに……24時間経たない内に……ふたりの男の人と……阿婆擦れもいいとこだ……
何があったか分かってても……
『惚れてる女、心配したら駄目か?』
そう……言ってくれるんだ……
「……会社にも来ないし、連絡もないし……心配するだろ……それに……こんな雨の日は……特に……って、何でもない……とにかく、真っ青な顔して、血の気もなくて……見つけた時……心臓抉られる気持ちだった」
『雨の日は特に……』
その続きを濁した都築くん……
何か嫌なことがあったのかな……そうは思っても……追求する立場ではないから、聞き逃す。
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