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「……やっぱ……似てる……」
小さな声で、何かを呟いた都築くんの言葉は、私の耳には届かなかった。
「…何?…何か言……っ!……」
『何か言った?』そう聴きたかったのに……
都築くんの目が……私を見つめる都築くんの目が……余りに優しくて……そして……その中に悲しく揺れるものを感じて……言葉が続けられなかった……
どうして……そんな目で私を見るの……?
頬を包む大きい手……親指の腹が、私の唇をなぞる。
「…用がないなら……俺の気分転換に付き合ってくれ……準備して来る……悠香さんは、ここで待ってろ……」
触れるだけのキスを落とし、都築くんは寝室を出て行った。
何も返答出来ぬまま……あっという間に、昨日同様に車に押し込まれる。
パーキングエリアに車を停め、街中を歩く。
少し遅めの朝食を、カフェで済ませ、都築くんが向かう目的地まで…一緒に来たのは……良いのだが……
「……ここが……都築くんの気分転換に……なるの?」
「…ああ…」
本当に?
だってここ……女性用高級ブティックですけがっ!
女の私でも、入るのに尻込みしてしまう程の、敷居の高さなんですけどっ……
臆することなく、店内に入ってく都築くん……の、後を追うしかない私……
頭の中は、クエスチョンマークでいっぱいだった。
「いらっしゃいませ…都築様…」
店内のスタッフが、都築くんを見て、会釈よりも……もっと深いお辞儀をする。
「ああ…」
それだけ言って、ずんずん中に進み……商品の服を何着か手に取り、物色し始める。
……都築様って……言われてたけど……何で?
「…おお、真吾っ!久し振りだな……っと……えっ!?……」
フレンドリーに、都築くんに話し掛けたひとりの男性が、私を見て……固まる。
「…広瀬 悠香さん……会社の先輩だ…」
簡潔に私を紹介する都築くんの、後をついで、
「初めまして…広瀬と申します…」
名乗って会釈する。
「…ああ……っと、俺はこの店の責任者兼、店長の三浦 圭です……初めまして…」
最初こそ、凄く驚いていたが、柔らかい笑顔で挨拶してくれた。
「…決めた…これとこれと…あと靴はこれで……髪のブローとメイクも頼む…」
「…かしこまりました…では、広瀬様…こちらへ、どうぞ…」
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