2247人が本棚に入れています
本棚に追加
都築くんから、預かった服を手に取り、気品溢れるスタッフの女性が、私に声を掛ける。
「…え……!?」
意味が全然分からなくて、その場から動けずにいると、都築くんが私の腰に手を回し、女性スタッフの方へ誘導する。
「…行って来な…」
ちょっと、待ってよっ!
そんな一言で片付けないで、ちゃんと説明してよっ!
「では、こちらへ」
声に出して反論も出来ず、渋々そのスタッフの後に続く。
「では、こちらのフィッティングルームで、お着替えをお願い致します。終わり次第声をお掛け下さい」
通されたフィッティングルーム……なんて広いのかしら……
都築くんが、選んだ服は薄い桜色の、オフショルダーのワンピースに、丈が短めのレースのカーディガン…それに、ワンピースと同じ桜色のストール……
着替えろと言うのだから、着替えるけど……
生憎、お洒落に興味がない私……こういった服には、縁がない上、普段着がジャージなら、休日もジャージで過ごすのが楽なのだ……
ジャージとTシャツなら、尋常じゃない程の数を持っている。
一般の女性の感覚からは、かなりズレている……それは把握している。
だとしても……いい加減な大人なので、どんなにジャージ好きでも、TPOは弁えてる……筈……
都築くんの意図が見えるようで、見えない。
彼は、こういう女性らしい服装を好むのかな……?
……だとしたら、彼のタイプから私は外れる……
……別にいいけど……
何となく……複雑な心境を抱えるが、そこから目を逸らす。
「…すみません……着替えました…」
「…まあ!とても、お似合いですよ、広瀬様!…都築様のお見立ては確かですね……では、こちらの靴をどうぞ…」
普段履くより少し高めのヒール……
見渡す世界が、数センチ高い……
その後は、この店専属のスタイリストさんに、髪のブローやメイクをしてもらった。
鏡に映る自分……誰ですかってくらいに、驚く。
プロが手掛けると、全然違って……別人のよう……
最初のコメントを投稿しよう!