2247人が本棚に入れています
本棚に追加
「とても、お綺麗です!…では、都築様の所へ、戻りましょう」
…こんな薄い生地の高価な服も…綺麗にブローされた髪も…私が私ではない様で…どんなに似合うと、綺麗だと言われても…やっぱりそれは、身に付けているものや、髪型やメイクのせいだと…思ってしまう…
「お待たせ致しました、都築様」
「…ああ…」
スタッフの女性にそう返事して、私を見つめる都築くんの表情と…その隣にいた店長の三浦さんの表情が…同じように驚いてる…
そりゃあね…馬子にも衣装でしょうよ…
気持ちは分かるけど…男性ふたりに同じ顔される私って…一体何なんだ…
居心地悪くて、思わず俯いてしまう。
「…やっぱりだ……」
都築くんの小さい呟きが、耳に入る。
…やっぱりだって…何のこと?
そう思って顔を上げると、さっきまでの表情はなく、とても…優しい顔をした…でも、その中に切なさを宿した目の都築くんが…私を見つめながら、近付こうと一歩脚を踏み出した…が、三浦さんの腕が、都築くんの肩を掴む。
「…分かってるのか…真吾…」
その一言に…いろんな意味が込められているなんて…私には分からなかった。
「…分かってる…ちゃんと分かってる……でもさ…どうしたって求めちまう…仕方ねえだろっ……」
「…そういう時点で、分かってない…お前はいいよ……でも……」
三浦さんが、私に視線を向ける。
ふたりの様子に困惑するしかない私は……黙っている事しか出来ない。
「……とりあえず……今日夜お前ん家に行く……話はその時だ……ごめんね…広瀬さん…変な空気出しちゃって…」
「…いえ……」
都築くんへの、強めの口調とは打って変わって、柔らかい笑顔でそういわれる。
「……悠香さん……行こう…」
都築くんが私の手を握り引く。
「…えっ!?…ちょっとっ…このまま!?……ていうか、私の服は!?」
「ここにあるから、心配するな」
そう言って、紙袋を見せる都築くん。
それよりも……
「…お金……」
「心配要らないよ…真吾が買ったから…またね…広瀬さん」
「…ぇ、えーーーっ!……と、ご、ごめんなさい…あの、はい……また……」
高級ブティックに、不似合いな叫び声を上げてしまい、店内の人達の注目を浴びてしまう……
ぐいぐい、私を都築くんが引っ張るから、三浦さんにちゃんと挨拶も出来ぬまま、店を後にすることに……
最初のコメントを投稿しよう!