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人生で……初めての経験をしている……
他人の視線を感じながら……街中で……キスするなんて……
何で、こんな展開になったんだっけ?
あ……恋人の話からか……
「……んっ!…ん……」
恋人同士なら……他人の目なんか気にならないのかもしれない……
……けど……
私と都築くんは、恋人じゃない……
一昨日よりは、都築くんの気持ちが見えるけど……私に対する気持ちが、冗談じゃないっていうのも、分かる……
……でも、そこにまだ……私の気持ちが辿り着かない……
執拗に絡む舌と……深く合わさった唇が離れる。
「……目……潤んでる……可愛い……」
「…か…可愛くないっ!…誰のっ……せいだとっ!」
「仕方ねえだろ……言葉で伝わんねぇなら、態度で示すしかない……」
悪びれもせず、そんなことを堂々と言う都築くん……
「…だからって……こんなところで……」
「…したかったから、しただけだ……とりあえず、行くぞ…」
店を出た時と同様に、手を引かれ、駐車場に向かう。
何もかもが、中途半端で分からないことだらけ……
押し問答になるだけだと思い、口を噤む。
それから……本当に恋人同士みたいに、水族館へ行ったり、水族館近くに出来た、ショッピングモールへ行ったりした……
ずっと都築くんと手を繋ぎながら……
「外でも歩くか?この時間なら、夕陽が海に沈んでく景色が見れる…」
その都築くんの提案に、どうせ近くに海があるなら、そこで見たいと言って、今……都築くんとふたり、季節外れの海に来て、砂浜から海を見つめてる。
普段、オフィス街で仕事して、自然に触れることなんて、なかなかない……
「…聴かないんだな?……何でブティックのオーナーなのか……」
気にはなった……なったけど、踏み込んでいい話なのか、判断が出来てなかった。
「…事情があるなら、他人の私が、簡単に入り込むべきじゃないと思ったの……」
日が傾いて、少し肌寒く感じる……
ジャケットを脱いだ都築くんが、私の肩に掛けてくれる。
「…ありがとう…」
いつもの私なら、要らないと突っぱねてしまう……でも、薄地のワンピース姿の私には、その優しさは、有難かった。
「…あの店を立ち上げる時に、出資者になったんだ……ただそれだけで、オーナー呼ばわり…実際あの店動かしてんのは、デザイナーの圭だ…」
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