lesson 1- 4 turn 真吾

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「…跡取りとして、決められたレールの上を歩きながら、親が決めた建築家の資格を取る為に、進んだ短大……その年に、そんな俺でも……本気で好きになった女が出来た……昨日の夜言ったろ?……好き合った者同士でのセックスは……ただ快楽得るだけのセックスとは違うって……そういう相手だった……俺にとってはさ……2年付き合って、建築家の試験も無事に受かって……その相手と共に生きていこうと決意したんだ……でも、その恋も……義母のせいで……潰されて……挙句に……目の前で彼女が事故にあってっ……!」 都築くんの身体が、小刻みに震える…… 唇を強く噛んで、目を伏せる都築くんの様子を見て……止めた言葉の後に続く言葉を、理解する。 「…………その頃……親父の愛人が男の子供を出産したのを、耳にしていて……今まで義母にされたことの全てをぶちまけて……俺は……望月の家と縁を切った……莫大な手切れ金と一緒にな……親父は慰謝料のつもりかもしれないけどな……それから、望月の家がどうなったかは知らねぇ……莫大な金があたって、俺の欲しいものは、手に入らない……で、圭が店を開きたいって言っていたから、その金を出資して、余った金で、自分であの家を建てた……それが、オーナーなんて呼ばれる理由と……ひとり暮らしの癖に、一軒家に住んでる理由……」 ……内容が内容だけに、何も言葉が見付からない…… 都築くんの視線が、まっすぐに私を見つめる。 「……二度と……誰も好きにならない……なれないと思ってた……悠香さんは、嫌かもしれないけど……似てるんだ……持ってる雰囲気も……話す言葉も…… 特にやりたいこともなくて、たまたま面接受けて受かった須藤出版に就職して……寄ってくる女と適当に付き合ってた……会社で耳にする名の……有名な広瀬 悠香という女を目にした時……衝撃を受けた……ごめん……興味を持ったのは……違う女とヤってるのを見られた時じゃない……もっと前に、俺は悠香さんを知っていた……好きになったきっかけは、確かに失った彼女に似てると、思ったからだ……でも、今は違う部分も見えて……ちゃんと悠香さんを想ってる……重ねて見てるだけじゃない……それだけは……分かってくれ……」 都築くんがひとり言を零していた時に聴こえた……『似てる』という言葉…… そういう……ことだったんだ……
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