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「…本当は……言わないでおこうと思った……『失った女の身代わり』……そう、思われるだろうし……いい気持ちは、しないだろう?…言い方は良くないかもしれない……でも、2番目に本気で好きになった女だから、嘘とか……良い部分だけ見せるとか……それは違うと思い直した……悠香さんを、他の誰にも渡したくない……俺と……結婚を前提に、付き合ってくれないか?」
「………えっ!?………」
……今……何か……結婚て……聴こえた……?
「…何で驚く?……本気だって、言ったろ?」
……いや……それは確かに、言ってたけども……まさか、この話の流れで、プロポーズされるなんて、思わないしっ!
それに……都築くんとはまだ……キスしかしてない仲だし……結婚て……身体の相性とか……って、何言って……でも、そういうのが良くないと……結局結婚したって……他の人求めたりとか……
そもそも……都築くんが、私ひとりで満足するとも思えないし……
それ以前に……結婚なんて……三十路の癖にですけど……考えたこともない……
「…すげぇ、百面相してる……」
「だ、だって……突然……そんなこと言うから……」
そりゃ、テンパるでしょうっ!
人生初のプロポーズを……まさか、都築くんにされるなんて……
「…悠香さんを想ってる男は……俺だけじゃない……でも俺は、ただ恋人になりたいだけじゃない……悠香さんの唯一の男になりたいんだ…」
……唯一=結婚……?
でも、お互いのこと……まだ全然分からないことの方が、多い……
私が知ってる……というか、思っていた都築くんと、本来の都築くんは全然違ってたけど、それだって…まだほんの一部分だし……
逆を言えば、都築くんが思い描いてる私と……実際の私は違う部分が多いかもしれない……
「……そんなに悩まなくていい……今すぐ答えが欲しい訳じゃないから……風……強くなってきたな……もう暗くなってきたし、車戻ろう……ほら…」
先に立ち上がった都築くんが、当然のように、手を差し伸べてくれる。
……さっきみたいに、気軽に掴めない私の手を、都築くんが手を伸ばして握る。
「……俺の手だけ……掴んでくれたら良いのに……」
ひとり言のように呟いた都築くん。
この手だけを……求める私になるのか……まだ……分からない……
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