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環生の頬にそっと触れる。
「私も同じ…環生こと…一番分かる存在になりたい…何ひとつ、この手から零れ落とさずに…」
ひとりの人間の全てを理解するなんて、本当は無理なのかもしれない。
自分のことだって、不確かなのに……
でも、分かりたい。
「じゃあ、悠香のことは俺が…俺のことは悠香が理解出来たら、お互いのこと一番理解出来る存在になれるね…いいね…そんな夫婦になりたいね」
「うん!そうだね!」
そう言って微笑み合い、環生が私の身体を自分の方に引き寄せる。
「…お風呂は明日の朝にして、今日はこのまま眠ろう…」
私の身体を自分の腕の中に収める環生。
「悠香を抱きしめたまま、眠りたい…」
環生の素肌の胸に頬を寄せ、背中に腕を回し、お互いの体温が重なる。
環生のその言葉に……
違うと分かってても、目に涙が浮かび、目の奥がツンとする。
ダメ…過敏になっちゃ……
今はまだ……
その時じゃないんだから。
「…明日、起きたら一緒にお風呂入ろうね…」
「…うん…」
そう、ちゃんと明日は来る。
「…今日は、俺の人生で一番幸せな一日になったよ…すごく満ち足りた…ありがとう、悠香」
ぎゅうっと抱きしめられる。
「私も、幸せだよ…ありがとう、環生」
今日は、環生と想いが重なって、心も身体もひとつになれた日。
ここから、始まる。
ふたりで生きる時間を、何よりも環生を大切にする。
愛して…愛される想いを、この身に記憶する。
「おやすみ、悠香」
「おやすみなさい、環生」
この日、心と身体を通わせて、初めて…環生と抱きしめ合いながら、眠りについた。
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