lesson3ー4 全てを掛けて

4/55

2249人が本棚に入れています
本棚に追加
/466ページ
結局……環生の愛撫によって、イカされた私…… 朝から、お風呂の中で…… そんなことされたら、逆上せて当然…… リビングのソファーにぐったりしている私をよそに、ご機嫌な環生は今、キッチンで朝ご飯を調理中。 対面キッチンだから、ここから環生が見える。 鼻歌なんか歌っちゃって…私が作ろうと思ったのに…… でも、始終笑顔の環生がそこに居て、嬉しい。 環生の心の、本当の気持ちを知る為に…… 閉じていた心の扉を開ける為に…… 究極の所まで追いつめて、泣かせた。 環生の苦しみの全てを、取り除く力は私にはないけど、理解して支えたい。 でも、結局それは、私が環生の傍に居たいだけなんだ。 ふたりで環生が作った朝食を食べ、片付けはふたりでした。 「環生、料理出来たんだね?すごく美味しかった!」 「そりゃあね…こんな年まで独身でしたし、家事全般は出来るよ!どっかの誰かさんが、俺がやる前に手を出すから、中々することが無かっただけで……でも、悠香が喜んでくれて良かった!」 『どっかの誰かさん』が誰かは、簡単に想像がつく。 「江口くんは、環生のお母さんみたいだよね?」 私が笑いながらそう言うと、 「あんな口煩い母親は御免だ……と思うけど、そう思うことは度々あるよ」 そんな話をしながら、ふたりで笑い合う。 それから出勤の支度をして、昨日コンビニで環生に買って貰った、便箋と封筒を鞄に入れる。 朝の時間はあっという間で、仕事に向かう時間が訪れる。 「…体調、辛くなったら無理しないでね!お昼に連絡するから!あと、ちゃんと薬飲んでね!」 後ろ髪引かれる思いで、玄関で靴を履いた私は、環生に向かい合ったまま、そう言う。 「大丈夫だよ…心配しないで…それより、はい」 私の手のひらにひとつの鍵が渡される。 「この部屋の鍵だよ」 「あ、ありがとう」 環生が私の肩に両腕を回す。
/466ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2249人が本棚に入れています
本棚に追加