lesson3ー4 全てを掛けて

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環生の胸に顔を付け、環生の心音に耳を傾ける。 環生の腕の中に抱き留められ、その背に腕を回す。 「…俺と悠香……始まったばかりだよ?この幸せを、簡単に無くしたくないから…生きる努力をする…昨日、悠香と約束した通りだから……無理しない、ちゃんと薬も飲む……だから、心配しないで…」 「…うん…分かった」 心配しないなんて、絶対無理だけど…それを表に出しすぎると、環生を辛くさせるのかもしれない。 上半身を少し離し、環生が私を見つめる。 「…お願いがあるんだ…悠香の時間が出来たら、病院に…一緒に行ってくれる?」 それは、私自身が望んでいたことだった。 「…いいの?」 「うん…今はまだ入籍してないけど、悠香は俺の最愛の人で、家族になるんだから……俺の病状を、知る権利がある…だから、一緒に行って欲しいんだ」 環生から、提案してくれるとは思わなかった。 「い、行くっ!絶対、一緒に行く!」 病状を知って、少しでも長く生きられる治療がないか、知りたい。 環生の命の時間を、少しでも…… 「…ありがとう…お昼電話待ってる…悠香が帰って来るの、待ってるから…帰って来たら、一緒に買い物に行こう?…だから、悠香も気を付けていってらっしゃい」 首を傾けた環生の、唇が私の唇に触れるだけのキスを落とす。 「愛してるよ、悠香」 「私も、環生を愛してる」 再度お互いの身体を抱きしめ合い、ゆっくり離れる。 「行って来ます!」 「うん、いってらっしゃい!」 微笑み合って、玄関のドアを開け、扉が閉まるまで、環生と視線を合わせてた。 閉じたドアの先に、環生がいる。 大丈夫と何度も言い聞かせても、環生の傍に居られないことに、居ない間に何かがあったならと、不安で押し潰されそうになる。 この気持ちを抱えて、日々を過ごすことは、私には出来ない。 環生の傍に居る……その未来を掴む為に、ひとつひとつ、けじめを付けなければいけない。 よし……行こう! 両手にぎゅっと力を入れ、登ってきたエレベーターに乗り込む。
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