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都築くんの次くらいに、女子社員から人気の前田 淳志くんが、夏ちゃんに声を掛けているのが、目に入る。
……前田くんまで……虜にする夏ちゃんて……
フロアにはもう、ほとんど人がいなくて、真っ赤な顔の前田くんが、ここまで聴こえる大きな声で……
「……あのっ!俺、前田 淳志っていいます!…ひ…一目惚れしました!良かったら、その……俺と付き合って下さいっ!」
盛大に告白をかましている。
きっと……目の前の夏ちゃんしか、目に入っていなくて……私と冬子さんの存在など、前田くんには映ってない。
公開告白ですか……
「……ごめんなさい……好きな人がいるので、お付き合い出来ません」
夏ちゃんは、そう言って頭を下げる。
……それに、男同志だしね……
「…そ…そう……なんだ……」
去年入社して、冬子さんのチームにいたはず……
告白されることは、多々あるであろう前田くん……
都築くんのように、色欲丸出しではなく、純粋で明るい性格に、好感を持たれてる……まあ、イケメンですけど……
ばっさり切られたことに、かなりショックを受けてるらしい。
「……その…好きでいても……いいかな?」
「……いえ…前田さんのこれからのために、どうか……」
「…うーん…でも、芽生えた気持ちって、簡単になくせないから……好きでいさせて!……時間取っちゃってごめんね!それじゃ!」
最後には、屈託のない笑顔でフロアから出ていく前田くん。
前田くんの、後ろ姿を見送った夏ちゃんが、こちらに振り向く。
「…多分、これで最後だと思うけど、もういい?」
げんなりした顔で、冬子さんに向けて、そう言う。
「良いわよ、うちの部署の男性……ひとりを除いた全員に、告白された?」
ひとり……都築くん以外ということ?
冬子さんの声に頷く夏ちゃん。
「後は、知らない部署から数人にされたよ……後の説明任せたからな!『騙された!』…なんて、罵られるの、勘弁だから……あ……
悠香さん、また後で!」
冬子さんから、私に向き直った、夏ちゃん。
完全に素で話して、前田くん同様に、フロアから出ていく。
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