2249人が本棚に入れています
本棚に追加
/466ページ
20年以上振りに、母と……こんなに真っ直ぐお互いの顔を見た。
存在を分かっていても、こんなにちゃんと顔を見たのは、本当に……久し振りだ。
「…私には…悠香の決心を、止める権利はないわ……それに、後悔を残したくないのでしょう?」
母の言葉に頷く。
「それなら、悠香の思う通りに、進むしかない……覚悟を決めているのなら、その通りに……悠香の、母親としては失格の私でも、我が子には幸せになって欲しいと思う……それが一番なの……悠香……これ…」
母が私に、一枚のメモ紙を渡してくれる。
「…何かあったら、力になる……出来ることは少ないかもしれないけど…迷ったり、辛かったり……心が苦しい時…誰かに吐き出したくなったら……」
そのメモ紙には、携帯番号が書かれていた。
「…ありがとう…お母さん」
「勿論、嬉しいニュースでも、何でも良い……悠香が誰かに何かを聴いて欲しいって思った時に、連絡して?」
20年以上離れていても、10年近く……ずっと見ていてくれた。
一緒に暮らせなくても、母親の愛情を、ちゃんと注いでいてくれたと思ってる。
「…うん、何にも無くても、連絡してもいい?」
「勿論よ」
「それから、今度……彼に会って欲しい…」
母に環生を紹介したい。
環生にも、母に会って欲しい。
「…会わせて、くれるの?」
「だって、私のお母さんだもの」
この人以外、母と思う人は私にはいない。
私の命を育み、この世へ誕生させてくれたのは、この母だけ。
「…楽しみに、待ってるわ」
涙ぐむ母がそう言った。
これから……
空いた時間が埋まるといいと思う。
時間が戻らなくても……
ここから……
最初のコメントを投稿しよう!