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環生のあからさまなヤキモチも、嬉しいって思う。
逆の立場でもきっと、私も同じように妬くのだろう。
妬くだけじゃ……済まないかもしれない。
「良いですね、入江さん!悠香さんにそこまで言ってもらえるなんて……少し前の悠香さんなら、絶対そんなこと言ってくれませんでしたよ?」
私と環生の会話を聴いていた夏くんが、そう言う。
「夏くん……どうして環生を呼んだの?」
「収拾がつかないと思いまして……俺が呼んだと言うより、事態を報したら」
「俺が行くって言ったんだ」
夏くんの説明の後に、環生が言葉を繋いだ。
「それにしても…こんなに沢山の男から言い寄られてるなんて……」
話が戻ってしまった。
「高嶺の花と称されてましたから…退職の件が広まって、告白ラッシュになったんでしょうね」
私を挟んで、そんな話をしないで欲しい。
「さっき大勢の人の前で、入江さんが『婚約者』って名乗ったから、もう収まると思います」
「それなら良いけど」
環生と夏くん。
持ってる柔らかい雰囲気が、どことなく似てる気がする。
バースト部に着き、フロアに存在する全ての人が、私達…というより、環生に集中する。
「TAMAKI先生っ!随分お早い到着でしたね!」
冬子さんが環生の姿を目にして、立ち上がる。
「そんなに悠香が心配でした?」
「そうですね、俺の大切な人なので…」
冬子さんのからかいを含んだ質問に、笑顔で答える環生。
「…いい方向に進んだようで、良かったです…でも、悠香が退職を決意するとまでは思いませんでしたが、それでもそれが必要だと悠香が思ったのなら、仕方がないと思います…まあ、違う形で本を作る仕事はして貰うつもりですけど…TAMAKI先生も是非!ご協力して下さいね!」
「え?…はい、出来る限り…でも、そうですか…違う形でも携わることが出来るんですね!良かったです」
私の退職の話に、最初反対した環生。
冬子さんの話を聴いて、ほっとした様子を見せる。
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