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「夏…素で話してたわね……悠香気付いたの?鈍感な悠香が気付くなんて、珍しい」
……そうですね……
私はどーせ、鈍感ですよっ!
気付いたというより、アクシデントのせいで、気付かされただけですし……
「…まぁ……成り行きで……それよりっ!弟に女装させて、何調べてたんですかっ!?」
「並の女より、綺麗な女装男子に気付かず、恋をする男がいるかどうか……その人数のリサーチをね……大体の男が見た目重視っていうのが分かったわ……特にうちの部署の男性達はね……世の中の男が全員そうだとは、言えないけど……だから、心が欲しい男の為に、女は綺麗になる努力が必要なのよね……そういうのを、ひと言コラムとして雑誌に掲載しようと思って!」
そう、にこやかに話す冬子さん。
自分の探究心の為に、実の弟をも、犠牲にする冬子さん……
何でも有りですか……
そう思いながら、冬子さんと宴会が開かれる居酒屋へ向かう。
ほぼ全員が揃い、気の合う者同士で、席に着いている。
都築くんも、前田くんも……ここぞとばかりに、女性に囲まれてる。
私はいつも通りに、冬子さんの横に座る。
後来てないのは、夏ちゃんか……
途端に……
「すいません、遅くなりました!」
カジュアルジャケットに、ジーパン姿……さらさらの茶髪のイケメンが現れる。
雑談で盛り上がっていた一同が、その声の主を注目する。
薄化粧のはずだったけど、化粧を落とした彼は……女装してた時と全然違う雰囲気を醸し出している。
冬子さんが椅子から立ち上がり、彼の元へ行く。
「改めて紹介するわ、私の弟の佐伯 夏です。入社一日目の今日、女性の姿をしていた夏と、同一人物です。私が調べたいことの為に、女装してもらったの……文句がある人は、私が受け付けるわ」
男性達は、目も口も開けっ放しで呆けていて、本当の姿を目にした女性たちは、黄色い声を上げている。女装していた夏ちゃんの時は、敵を見るような目で見ていた癖に……
「…えー、姉の指示とはいえ……騙すような事をして、すみませんでした」
頭を下げる夏ちゃんとは、対照的に、
「新入社員の余興だった…ってことでいいじゃない?」
悪びれもせずに、そう言い放つ冬子さん。
ふたりがこちらに来て、何故か佐伯姉弟に挟まれる私……
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