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【said 環生】
都築くん…彼の後について、応接室に入る。
悠香の心配気な表情が頭から離れない。
大丈夫だよ…
散々後ろ向きだった俺の、本心を表に出させてくれた夏くんと、俺を求めてくれた悠香の想いが、俺の心の芯にあるから。
万人が万人共、ひとりの考えに賛同する訳もない。
「どうぞ」
都築くんに促され、都築くんと向かい合い、ソファーに座る。
向かい合い、挑む様な彼の眼差しを、真っ直ぐ受け止める。
「…都築くんは、悠香が好き…なんだね?」
それ以外の理由で、都築くんがこんなふうに俺を見る理由はない。
「既に、振られてますが…それより、分かってるんですか?残される側の人間の気持ち…俺は、悠香さんに、その辛く苦しい気持ちを知って欲しくないと、思っています…残った想いが、向けたい相手がどこにも居なくて、やり場が無くて、切ない……そんな思い、して欲しくない」
……都築くんは…その思いを、知ってるんだね。
─バンッ!─
感情の猛りを抑えられないのか、都築が両手でテーブルを叩く。
「…あんたはっ、受け入れるべきじゃなかったっ!ずっと一緒に居てやれない癖にっ!まして、結婚なんてっ!」
…無責任…だよな。
都築くんが言いたいことは、良く分かる。
だって、それは俺が思っていたことだから。
俺が居なくなった悠香の未来を、案じない訳はなくて……
悲しみを与えてしまうことも、重々分かってる。
悠香と結婚する資格なんて、俺にはないことも。
それでも……決めたんだ。
「都築くんが言いたいことも、言ってる意味も…全部理解出来る…俺もずっとそう思っていたからね…でも、決めたんだ…俺の命ある限り、俺の全てで悠香を愛し抜くと…傍に居られる時間は少なくても、悠香の心に…俺の想いを残せる様に…ふたりで居られる時間を大切に、何より悠香を大切にする…もう、間違いたくないんだ」
「…迷って…ないんだな」
「そうだね、決意したから」
きっと…悠香を大切に思う人ならば、都築くんのように、考える人がいる。
努力……しないとな。
「あんたが…俺の言葉で揺らいだり、迷ったりしたら…絶対に説き伏せてやろうと思った…でも、そんな隙、無さそうだ」
そう呟いた都築くん。
「迷っていたなら、結婚なんてしないし、今こうしてキミと向かい合ってもいないよ」
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