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「それもそうか…なら、ふたりでいる間は、絶対泣かさないでくれ!あんたの傍にいて幸せだったと…悠香さんが思えるように、大切にして欲しい」
「肝に銘じとくよ」
俺の返答を聴き、『はあー』と深い溜息を吐いた都築くんは、背をソファーの背凭れに沈ませる。
「本当は…俺が悠香さんと結婚したかった…まあ、振られちまったから、どんなに願っても無理だが…」
その言葉に驚く。
「振られたって……」
さっきもその言葉は聴いていたけど……交際を断わられたという意味で捉えていた。
「俺、悠香さんにプロポーズしてたんで…すよ」
プロポーズっ!?
それは、めちゃくちゃ初耳なんだけどっ!
タメ口でいたのに気付いたのか、取ってつけたように、敬語に戻した都築くん。
「ああ、今更敬語はいいよ…素の話し方で問題ないから…それより、プロポーズって…」
姿勢を正した都築くん。
「いえ、すみませんでした………悠香さんに『結婚を前提に』お付き合いをと、言ってたんですよ…一昨日みごとに振られましたが」
一昨日のこと、なんだ。
「TAMAKI先生を見つめる悠香さん…俺が知る悠香さんと全然違います…羨ましいですよ、めちゃくちゃ…絶対に、幸せにして下さい…悠香さんが幸せなら、俺は…ちゃんと前を向くことが出来る」
都築くんの、最後の言葉の意味は分からなかったけど、
「約束するよ」
悠香を想う彼らから、悠香を奪うのだから、必ずその約束を果たしてみせる。
誰より、悠香の為に……
残りうる俺の時間は、全て悠香の為に使うんだ。
都築くんとの話を終え、悠香が同僚達に別れの挨拶をし、佐伯さんの計らいで、就業時間よりもずっと早くに、須藤を出た。
行動の早い佐伯さんは、悠香の退職の事務手続きが済次第、直ぐに次の仕事の手続きがスムーズにいくよう、それに必要な書類も悠香に渡しているらしい。
『私と悠香のパイプは、夏に任せるわ…さっき言ってた物を、夏に届けさせるから、その時までに書類準備しといて!』
色々疑問の浮かぶ言葉だったが、その時は黙って聴いていた。
佐伯さんにそう宣告された悠香は、苦笑いをしていた。
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