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「心境の変化は、それだったんですね…頭を上げて下さい、入江さん」
そう言われて頭を上げ、宮本先生の顔を真っ直ぐ見る。
「まずは、おめでとうございます」
「はい、有難うございます」
その俺の顔を見て、宮本先生が笑う。
「何にしても、良いことだと思います…入江さん自身が、生きる意味を見つけられて…そして、入江さんの一番の理解者になってくれる存在が、入江さんの傍に居てくれることが……分かりました…では、X線写真撮影後に再度お呼びした時は、婚約者の方もご一緒に診察室に来て下さい」
「宮本先生っ!?」
背後に控えて居た看護師が、先生の名を呼ぶ。
「規則に反してしまいます!」
宮本先生がその看護師に振り向く。
「患者さんの希望に添えない規則なんてクソ喰らえです…責任は私が取ります…それで問題は無いでしょう?」
宮本先生が、どんな表情をしてるか分からないけど、先生にそう言われた看護師は、怯えたような表情を浮かべている。
押し黙った看護師から、俺に向き直った宮本先生。
「すみません…無理なことをお願いしてしまって」
再度頭を下げる俺。
俺の意思を汲んでくれた宮本先生が、窮地に立つかもしれない。
「入江さんが謝る必要は、ありませんよ…でも、そうですね…悪いと思ってくれるなら、これからは、定期受診をすっぽかさないで頂けたら、有難いです」
その宮本先生の言葉に、顔を上げる。そこには笑顔の宮本先生がいた。
「勿論です!二度としません」
「約束ですよ?ファイルを渡されたら、X線室に向かって下さい」
「はい」
宮本先生に再度一礼して、診察室を出る。
出て直ぐにファイルを渡される。
俺が診察室から出て来て、悠香も立ち上がり、俺の元まで歩く。
「宮本先生、許可してくれたよ」
「本当!?…良かった…」
胸に手を当て、安堵の表情を浮かべる悠香。
俺は…俺を案じてくれる全ての人に、生かされてる。
その中でも、一番は悠香だ。
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