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悠香と一緒にX線室に向かい、X線写真を撮り終え、再度呼吸器科に戻る。
それからまた30分近く待ち、再び名前を呼ばれ、悠香と一緒に、宮本先生の診察室に入室する。
「初めまして、入江さんの担当医の宮本です」
「広瀬 悠香と申します…あの、宜しくお願いします!」
深々と頭を下げる悠香。
その姿に、懇願が見えて…胸が、痛む。
「こちらこそ」
ふたりで宮本先生の前に座り、向かい合う。
「入江さんがこうして、また病院に来てくれたのは、他の誰でもない貴女のおかげです…入江さんから、入江さんの余命については、お聴きしていると思いますが、それはあくまでも推測に過ぎない…生きる希望、生きたいと願う力は、何よりも強いことを、けして忘れないで下さいね」
「「はい」」
悠香と同時に返事をする。
「では、順に話をしていきます…入江さんの病名は肺癌です…詳しく言うと非小細胞肺癌と言って、主に煙草が原因でなる癌です…そして段階はステージ4…肺以外の臓器にも、転移しています…手術をして摘出することは、不可能です…私が入江さんに告げた余命は、約10ヶ月です」
1ヶ月まえに、同じことを言われた俺は、事実として受け止めているからいいけれど……
膝の上で、自分の両手をきつく握る悠香の横顔が、辛そうに歪む。
「ステージ4の患者さんに出来る治療は、手術以外の抗がん剤療法と免疫療法がありますが、入江さんは抗がん剤療法と入院は既に拒否されています」
宮本先生が俺を見る。
「今も、その気持ちは変わりませんか?」
抗がん剤療 を、受けるべきなのだろうが…後数ヶ月を、病院で過ごしたくないし、ベットに括り付けられて終りたくない。
悠香との時間を、大切にしたいと思う。
「変わりません」
俺の返答に頷く宮本先生。
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