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「医者の私の立場なら、抗がん剤療法を勧めるのが、きっと正しい医者の在り方なのかもしれませんが、それが全てではないと思っています…患者さん、一人一人によっては同じ病でも、同じ治療が必ずしも合っているとは思えません…何より、ご本人の意思を尊重したいと思っています。抗がん剤は小さな癌などに対しての効果はありますが、健康な細胞まで壊してしまうデメリットがあり、免疫力を下げてしまう…様々な副作用があり、精神的にも肉体的にも、とても負担が掛かる辛い治療です…その治療を受けることで必ず完治出来るならば、何としても勧めますが…」
そこで言葉を折った宮本先生。
伏せた目と、その表情で分かる。
そうじゃないってことだ。
残り少ない時間を、苦しみながら過ごして終えるなんて、まっぴらだ。
「先程の受けていただいたX線検査の写真を見ても、一ヶ月前と同様に、やはり他の臓器に転移していますね…」
X線写真を見ながら、宮本先生がそう言う。
再度俺達に向き直った宮本先生。
「残る治療は免疫療法です…体内の免疫を高め、癌に抵抗する力を高めることが目的です…規則正しい生活と、睡眠、ストレスを溜めず、免疫力を高める食事をする…簡単な様ですが、なかなかそれが出来ない方もいますが、入江さんには、支えて下さる方がいるから、大丈夫でしょう…精神状態は、免疫力や回復力に大きく影響するんです…免疫療法は、医学的には効果が実証されていませんが、免疫療法で余命を長くされた患者さんもいるのもまた、事実です…入江さん、やれることから、やっていきましょう」
「はい」
「これが、免疫力を高める食材のリストです…ビタミンCとビタミンEが多く摂取して下さいね…ファイルに一緒に入れておきますので、会計時に貰って下さい…それから、薬は気管を広げ呼吸を楽にする薬を続けて処方します…他に何か気になることはありませんか?」
「…あの…」
宮本先生の問い掛けに、悠香が口を開く。
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