lesson3ー4 全てを掛けて

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「入江さん、癌を患っていても、あなたは普通の人間です…普通の人間が普通に望むものを、諦めることはないと、私は思います…限りがあるから諦めるのではなく、限りがあるからこそ、貪欲になっていいんです…おふたりで、良く話し合って下さい…では、また一ヶ月後にいらして下さいね…あ、それとこれを…」 宮本先生が名刺を悠香に手渡した。 「もしも…入江さんの病状が急変する事があったら、ご連絡下さい…直接私に繋がりますので」 「ありがとうございます!」 普通の医者の域を超えてると思うが、宮本先生はこういう人なのだろう。 宮本先生に頭を下げ、診察室を後にし、家路に着く。 悠香の運転する車の中では、お互い何も話さなかった。 またひとつ…… 考えなければいけないことが出来た。 宮本先生は、きっと…躊躇する俺の気持ちが分かって、分かった上であんなふうに、俺の背を押すような言葉を掛けてくれたんだろう。 宮本先生の気持ちも、悠香の気持ちも…嬉しくて、有難い。 妊娠を望んだって、今すぐ出来る訳じゃない。 だとしても……やっぱり簡単に踏み込めない自分がいる。 マンションに着き、悠香が作ってくれた昼飯を食って、薬を飲んでソファーに深く座り、脚を伸して投げ出す。 「疲れちゃった?ベットで横になったら?」 俺の横に座った悠香がそう言う。 「いや…大丈夫だよ」 発病する前の身体に比べたら、体力はかなり低下していると、自分でも気が付いている。 それに加え、最近は部屋から一歩も出ずに過ごしていたから、余計に落ちたかもしれないが、それよりも今は…… 俺を見つめる悠香に視線を向ける。
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