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私が何かを望むと、環生に自分の病と、残りの時間のことを考えさせてしまう。
考えたくないことを、考えさせて…苦しめてしまう。
それが分かっていても…どうしても、口に出さずにいることは出来なかった。
他の誰でもない…環生との子供を…環生にも、望んで欲しかった。
我儘ばかりで、ごめんね……
恋人である期間を飛び越えて、結婚を迫り、入籍前に子供が欲しいなんて……
この私が望んで口にするなんて、自分でも思わなかった。
環生の担当医の宮本先生から、環生の病名を聴き、他の臓器にも転移していて、手術でどうにかなるものじゃないと……
だけど、打つ手が何ひとつない訳じゃなかった。
望まぬ日が、少しでもいい。
延ばせることが出来るかもしれない。
そうして余命を延ばした人がいたと、宮本先生は言っていた。
『病気を理由に、もう何も諦めない』
そう言ってくれた環生の言葉が、何より嬉しかった。
出来ることは何だってする。
環生と、一緒に居るために……
「そうだ…連絡ついた?」
環生の問いに頷く。
環生が何を言っているか、分かる。
「今日は仕事でいつもより遅いけど、それでも良ければって…20時くらいに行く事にしたから、夕飯食べてから出掛けよう?」
昨日の夜に父に連絡をした。
父とのやり取りを、思い出す。
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