lesson3ー4 全てを掛けて

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昨夜、環生の入浴中に父に連絡をした。 久し振りに父に電話を掛ける…ということよりも、告げる言葉に、言い様のない緊張感に包まれる。 詳しい事は、会ってから話せばいい。 今は、父に会う時間を作ってもらうことが先決だ。 アドレスから父の携帯番号をタップし、通話マークに触れる。 コールの音と、自分の鼓動の音が重なるように感じる。 今でこんなに緊張してちゃ、だめだよっ! 耳に当てる、携帯を持つ手に力が入る。 数回のコール後…… 『…もしもし、久し振りだな…元気にやってたかい?』 聴き慣れた、穏やかな声音の父の声。 『うん…お父さんも、元気だった?』 一人暮らしを始めてから、定期的に連絡はしていたが、会うのは年間で片手で数えられるくらいだ。 『ああ、変わりないよ!それより、こんな時間にどうした?何かあったのかい?』 声音は変わらないが、私を案じてくれている言葉を掛けてくれる。 『あのね…お父さん…明日なんだけど…時間ある?あ!…仕事あるの分かってるから、その後でいいの…その…お父さんに…会って欲しい人がいて…』 父に、こんなことを言う時が、私に訪れる日が来るなんて、思わなかった。 彼氏のかの時も、恋人のこの時もなかった私が…… 『……………………』 父の返答を待っていた私も無言で、父も何も言わないから、静寂に包まれる。 待ち切れなくなった私が、 『お、お父さん…聴いてる?』 『えっ!?あ…うん…勿論、聴いてるよ…その、少し…いや、かなり驚いて…そうか…そうかっ!』 始めは辿々しかった父が、明るい声を出しはじめる。 『いやぁ…まさか悠香にそんなこと言われる日が来るなんて、想像してなかったよ!心の準備が全く出来てなかったからな…どうせなら、休みの日にゆっくり、食事でもしながら会ったらどうだい?』 結婚に向けて、一刻も早く進めたい私には、父の提案を利くことは出来なかった。 『早く…会って欲しいの』 『早くって……そんなに急ぐことは……って、悠香…もしかしてっ!』 こちらの事情を知り得ない父が、何かを思い付いたようだ。 『そっかぁ…そういうことか…』 しみじみ…且つ何故か嬉しそうな口振りの父に、私の頭の中はクエスチョンマークが浮かび上がる。
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