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「何で夏が、悠香の社員証持ってるのよ?」
決意した通り、姉の住むマンションに訪れた俺が、差し出した物を手にし、姉の冬子がそう言う。
「バイトの時に拾った……会社帰りに買い物に来て、きっと落としたんだと思う…」
…冬子はさっき……悠香さんを……『悠香』と呼んだ……
近しい間柄なんだろう……
「姉貴から渡してあげて……それよりさ……聴いて欲しいことが、あるんだ…」
冬子に悠香さんとの出会いから……今この胸にある悠香さんへの気持ち全てを話した。
「……夏の想い人が……悠香……いいわよ…協力してあげる……その代わり……夏も私に協力してよね……?」
藁にも縋る思いの俺には、冬子の言う条件を拒む権利なんか、なかった……それが…あの女装に繋がったんだけど……
悠香さんにとって……もう……通り過ぎる景色の一部でいたくない……
佐伯 夏として……
ひとりの男として……
悠香さんの目に映りたい……
ただ…見ているだけなんて……もうしない……
……一方通行に終止符を打つ……
この想いが……悠香さんに届くように……
そして、願うなら……
俺と恋をして欲しい……
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