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娘の呼んだタクシーが来た。
私の前に停まると、にゅーん……と変形して人型のロボットになる。
「おまたせしました」
「待ってはいない。私をどこへ連れてゆく」
タクシーロボットは、優しい笑みをうかべた。
「ロボットのたまり場になっているバーがある。とりあえず、そこへ行こうと思うが、いかがか」
ロボットのたまり場。まとめて処分されるのではないか。一抹の不安がよぎったが、ほかに行くあてもない。承諾して、私はタクシーに乗った。
タクシーロボットはひとことも話さない。そのことが、私の不安をさらにかきたてる。
繁華街の通りを入ったつきあたりに、銀色の建物があった。雨風にさらされ、変色している。使われていない工場のようだ。ここがバーなのか。
タクシーロボットは私を降ろすと、もと来た道を引き返していった。
看板のない扉の前に、ロボットが立っていた。
「入店するか」
私はうなずく。
ロボットは私をくまなく観察し終えると、扉を開けた。
「ようこそ。ロボットバー、atomへ」
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