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夜。
人々の活動が緩やかになるころを見計らって、歌うことにした。
場所は、昼間見たゴージャスな洋服のある交差点。道路をはさんだ真向かいに、ギターケースをおろして開ける。ここからだと、店の展示がよく見える。
閉店後のショーウィンドウは、ダウンライトに照らされ、昼間とはまた違った妖艶さをふくんでいた。
ギターを鳴らし、歌いはじめる。
時おり通る、車やロボット。仕事帰りの人……。
オフィス街だからなのか、ピークを過ぎた夜に、人通りは少ない。
駅前の広場にも行ってみたけれど、飲食街も近く、にぎわっていた。パフォーマンスをする者も多い。でも、ごちゃごちゃしすぎていて、私には合わなかった。
はじめはこんなものか。
あきらめて、atomに戻る。
マスターに頼みこんで、しばらく居候させてもらえることになった。店の手伝いをすることと、客に歌をうたってきかせることが、条件だった。
バーは夜に開くが、日中はサロンとして機能しているということだった。マスターと一緒に、訪れるロボットの世話をする。私と同じように、滞在を許されたロボットが、サロンに常駐していた。
そんな生活が何日かつづいたある夜。
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