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大型トラックの薄暗い荷台で、私はギターを抱えうずくまる。積み荷のダンボールに挟まれて、タイヤの振動をやりすごす。飛ばしていたトラックが速度をおとす。プシュっと音をたてて停まる。エンジンが切られる。
バタンとドアの閉まる音がしたあと、荷台の戸が叩かれた。
重い扉が開く。
「お嬢ちゃん」
トラックドライバーが、ぬっと顔をだす。黒光りするボディに、スタッズのついた革ジャン。灯る瞳は私と同じ、ロボットの色。
「休憩だ」
ギターを抱え、私は荷台から飛び降りた。
サービスエリアの充電ステーション。長く動いていたからね。エネルギーを蓄えないと。
トラックドライバーは、人間でいうと50をすぎたくらいだった。〝おじさん〟と呼ぶことにする。
私はオイルをひと口飲んだ。おじさんは、慣れた手つきで充電プラグを体に装着する。充電タンクによりかかり、ギターをかき鳴らす仕草をする。
「じゃあなんだ、流しの歌うたいか」
私もタンクによりかかる。
「そんなところ。助かったわ。ひろってもらえて。温泉街は素敵だったけど、目立ってしまって」
私は昨日まで、島随一の温泉街にいた。湯治客を相手に、お座敷で歌っていたけれど、ロボットの姿を見かけない。私そのものが珍しいようで、ろくに歌を聞いてもらえなかった。
この町を離れよう。そうして、ヒッチハイクで捕まえたのが、このおじさん。
おじさんは、黒いボディにワックスを塗りながら言う
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