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「お嬢ちゃん、歌手なんだからよ、鉄鋼むきだしのボディじゃ、ちょっとな。それに、なんつったって、ロボだらけの港町だからな。めかしこんでいけ」
私が礼を言うと、おじさんは『かまわんよ』と首をふる。
「旅は道連れ。ロボット同士、助け合おうじゃないか」
助け合う?
「俺んところの社長がいつも言ってるよ。今の時代、人も、ロボットも、助け合わなきゃいかん」
「社長?」
「雇い主だよ。人の所有物として、登録されてるんだ。だから俺は日本じゅう、あっちこっちトラック走らせることができる」
雇い主? 所有物? 登録? はじめて耳にすることばかりだ。
おじさんは教えてくれた。
工場から出荷された私たちは、それぞれの特性により、流通先が分かれる。介護用、警備用、子守用……。買い手がつき、登録されることで、身の安全が保障される。
「登録って、どこに?」
おじさんは、あごをさすり、考え込んでしまった。
「戸籍、住民票、永住権……? いや、なんだかよ、俺にもよくわからないが、まあそんなところじゃないか」
とにかく、人の持ち物になってる、ってことだ。調子悪くなったりしたら、メンテナンスの義務はその人にある。と、おじさんは言った。
「私、登録されていない。どうなるの」
「お嬢ちゃん、欠陥品じゃないよな」
欠陥品。ただ歌をうたうだけの私に、欠陥などない。
「たとえば」
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