トラベルシンガー・ドリュー

4/30
前へ
/31ページ
次へ
「お嬢ちゃん、歌手なんだからよ、鉄鋼むきだしのボディじゃ、ちょっとな。それに、なんつったって、ロボだらけの港町だからな。めかしこんでいけ」  私が礼を言うと、おじさんは『かまわんよ』と首をふる。 「旅は道連れ。ロボット同士、助け合おうじゃないか」  助け合う? 「俺んところの社長がいつも言ってるよ。今の時代、人も、ロボットも、助け合わなきゃいかん」 「社長?」 「雇い主だよ。人の所有物として、登録されてるんだ。だから俺は日本じゅう、あっちこっちトラック走らせることができる」  雇い主? 所有物? 登録? はじめて耳にすることばかりだ。  おじさんは教えてくれた。  工場から出荷された私たちは、それぞれの特性により、流通先が分かれる。介護用、警備用、子守用……。買い手がつき、登録されることで、身の安全が保障される。 「登録って、どこに?」  おじさんは、あごをさすり、考え込んでしまった。 「戸籍、住民票、永住権……? いや、なんだかよ、俺にもよくわからないが、まあそんなところじゃないか」  とにかく、人の持ち物になってる、ってことだ。調子悪くなったりしたら、メンテナンスの義務はその人にある。と、おじさんは言った。 「私、登録されていない。どうなるの」 「お嬢ちゃん、欠陥品じゃないよな」  欠陥品。ただ歌をうたうだけの私に、欠陥などない。 「たとえば」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加