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間違えた、天使じゃなくてゆずみくだった。
天使以上に神々しいゆずみくだった。
赤いギンガムチェックのレトロワンピースに、可憐な花のアクセサリー。麦わら帽子にラフな三つ編み。
今日のゆずみくは麻緋のドストライクだった。ああやっぱり、ゆずみくは赤が似合う。
うっとり見蕩れていると、女性スタッフが背中を押す。早く行けの合図だ。
おずおずとゆずみくの前に立つ。
呆気なくパニックになった。
(うわぁあああゆずみくヤバイ! 二ヶ月ぶりの生ゆずみくヤバイ! いい匂い! 前髪ちょっと切って短い! おでこきゃわいい!!)
過呼吸一歩手前の興奮状態で、麻緋はハッとなり、鞄の中のプレゼントを取り出してゆずみくに差し出した。
「おた、お誕生日おめでとう!」
その瞬間、しまったと思った。プレゼントは専用ボックスに入れるのがルールなのに。死にたい。
「ごめん!」
「あはは、いいよー。どうもありがと」
ゆずみくは笑顔だが、その横のスタッフは苦い顔をしている。気まずい。
早く握手して立ち去ろう。と、あれだけ求めていたゆずみくなのに、いざ目の前にすると急に消えたくなるヲタ特有のアンビバレンツに襲われるーーその時だった。
「お姉さんもおめでとう」
ゆずみくの可愛い声が、そんなふうに告げた。
加えて、ゆずみくが可愛らしく首を傾げる。
「今日、お姉さんの誕生日なんだよね」
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