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一瞬、ゆずみくが外国語をしゃべったのかと思った。本気で理解不能に陥った。
「あれ、違った?」
「いや! ……違わない、けど……」
何で?
「よかった。何回か前の握手会の時に言ってたでしょ。私と一日違いだって」
正解に安堵するゆずみくは、……可愛かった。
(あ……)
……や ば い。
だめだった。止められなかった。胸の内から、心の底から、込み上げてくるものが全部涙に変わった。
喘ぐように息を吸い込むと、嗚咽が漏れた。口を抑える手に熱い涙が伝う。
「うん、うん、そうなんだ……今日、私の誕生日なんだ……!」
七月一日。
今日は、麻緋の二十八歳の誕生日だった。
ゆずみくの誕生日イベントがこの日だと知って、麻緋の胸はかつてないほどときめいた。
最高の誕生日プレゼントだと思った。ゆずみくからの、運営からの、神からの、そして自分自身からの。
だからどうしても、どうしてもゆずみくに会いたかった。
「ありが、とう……ありがとう……!!」
この「ありがとう」は、誕生日を覚えていてくれたことに対してか。「おめでとう」というお祝いに対してか。
それとも、日頃の思いからか。
その存在が麻緋に力を与えてくれる、ゆずみくへの感謝の念だったのか。
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