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ルララと夜騎士と合流した麻緋は、ずっと震えていた。
二人の顔を見た瞬間、改めて決壊して、
「うわああああああん!!」
と、赤子のように泣き出した。
慌てた二人が慰めてくれる。
「マヒマヒさーん、気持ちは分かるけど落ち着いて」
「一般の人たちもいるんですよーみんなこっち見て、完全にドン引いてますってー」
麻緋の頭や背中を撫でたり、タオルを貸してくれる二人の向こうで、一般の人たちーーゆずみくファンではない、単なるこの施設の利用者たちがいた。皆一様に、麻緋に好奇の目線を投げてくる。
「うわ、何あれ?」
「マジ泣きじゃん。いい年してキモッ」
「オタクってああいうとこあるよね」
「ママー、あのひと大人なのに何で泣いてるの?」
「シッ、見ちゃいけません」
口々に勝手なことを言ってくれる。
そんな一般的で、普通の人たちの本音を耳にしながら、麻緋はぐるぐると考えていた。
(……私の、この幸せは、きっと色んな人らに否定されるもんなんだろう)
こんなのは本当の幸せじゃない。
浅くて薄っぺらい、くだらねー幸せだと。
そんな風に思われることが、多いんだろう。
仕事で出世するとか成果を上げるとか、大金を手にするとか、……私の年なら恋愛、結婚、出産、子育て?
そういうものが、『本当の』幸せだって世間サマは指をさすんだろう。
(ーーそれがなんぼのもんじゃい)
今、私を満たしているのは、これだ。
この、お金で買える幸せだ。
お金で買える幸せが積み重なって生まれた、この奇跡だ。
断言できる。
私は間違いなく幸せだ。
今日は、人生で最高の誕生日だ!!
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