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産声ぶりに号泣した麻緋は、ようやく泣き止んだ。
顔の皮膚の表面がパリパリになっている。ウォータープルーフのマスカラは撃沈した。
有難いことに、ルララも夜騎士もずっと傍にいてくれていた。
心の友に向かって、麻緋は改めて言った。
「あのさ、私ちゃんと分かってるからね? ゆずみくが私の誕生日を言い当てたの、完全に偶然だってこと」
そりゃそうだろうーーと、期せずして二人は、ゆずみくの付き人と同じ答えを返した。
雨が上がり、きれいな夕陽が夏の空を染めていた。
澄みきった空気の中に、大きく息を吐く。
「……ゆずみくのファン、やっててよかった……」
しみじみと今更で当たり前で、何度も実感してしまう事実を口にする。世界一、清々しい気持ちで。
ルララも夜騎士も同意してくれた。
「さってと、お腹減ったからラーメンでも食べに行こっか。オゴるよ」
「やったー! この近くに地味だけどメチャうまい個人店ありやすよっ」
「いや、チェーン店一択だ。店内に設置されている、お客様の声的なアンケートに、『ゆずみくをCMに起用してください』って書く」
「アンタほんっとブレねぇな」
どこまでいっても推し中心に行動する、ヲタの鑑な麻緋に、ルララも夜騎士も丁寧語を忘れて、やんわりとツッコんだ。
了
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