0人が本棚に入れています
本棚に追加
小さい頃からずっと、言札が見えた。
もしかしたら、産まれた頃からかもしれない。
なぜなら死んだ母も祖母も、同じだったから。
知りたいと少しでも思えば、言札が教えてくれた。
そのおかげで、周りから煽てられ、期待され、羨ましがられたりしたが、私はそれらを遠ざけた。
素晴らしい能力、とよく言われたが、私にはそうは思えない。
四六時中、私の周りには言札が漂い、時に映画の結末を知らせ、飼い犬の寿命を知らせ、人々が私に対して不気味に感じていると教えた。
今日の午後の天気や、ネッシーの真実、選挙で選ばれるのは……なんて、言ったところで信じる人はあまりいない。
きっとヤバい人だって思われる。
私にとって、知る事は何も面白くない。
知りたくない。
知りたくないのに、無意識な好奇心がまた言札を呼び寄せ、目の前の男が昨晩奥さんとどんな夜を過ごしたかを、残酷に教えてしまうのだ。
この力は母からの遺伝、母は祖母からの遺伝。
でも、ごめん、2人とも。
私はきっとこの力をつなげられない。
だって結婚したいと思う男は、奥さんとめっちゃ仲良くて、可愛い息子もいるんだ。
よくよく見たら普通のおっさんなのに、大好きで仕方ない。
母も祖母も短命だった。
きっと私もそう。
最初のコメントを投稿しよう!