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その週末、私は××デパートの屋上にいた。
まだ少し肌寒い。
なぜ来てしまったのか…憂鬱に思っていると、言札が浮かび上がる。
うんざりだ。
私の感情さえ、文字にしてしまうのか。
…どうやら私は、昭一さんの家族に自分を重ねて、それを見つめたいらしい。
まったく惨めったらない。
屋上の隅に立ってぼんやり視線を迷わせていると、エレベーターから、昭一さんが現れた。
次いで女の人が現れ、2人の間には、男の子が手をつないでいた。
3人とも笑っていて、幸せそうに見えた。
増えていく人混みの間を見失わないように目で追った。
…美しく思えた。
切ないような、羨ましいような、愛おしいような、そんな気持ちが混ざり合って、胸に染みた。
きっと肩車とかしてあげるんだろうな。
その時、突然に、彼の周りにいくつもの言札がぶわっと浮かび上がった。
それが私の思考を止めた。
「…………え?」
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