29人が本棚に入れています
本棚に追加
できたての朝食を出せるいいタイミングだ。部屋の前でぼんやり立ち尽くす唯に声をかけた。
「おはよう」
「……おはよーございまー……す」
朝は弱いほうらしい。寝起き直後の間延びした挨拶も、思い思いの方向にはねた寝癖も愛らしいが、一瞬見せた表情が問題だ。
「どうした、しかめっ面して」
「……起きたら、頭痛くって……」
「……頭痛?」
まさか、嘘だろう――という言葉は飲み込んだ。
客人は、ワイングラス半分以下で二日酔い。
もしそうだとしたら、とんでもない下戸じゃないか。
「寝冷えたかもしれんな」
そう考え直して、さっとコンソメスープを作る。
「あたたかいうちにどうぞ」
「ありがとうございます」
一階に降りて来る時から何故かちらちらと気まずそうに俺を見ていた彼女は席につき、「いただきます」と手を合わせてスープを口にした。
「旨」
目を丸くしてもう一口飲む姿に喜びがこみ上げる。と、
「長塚さん」
「ん」
「何で上半身裸なんですか」
「……ああ、風呂入ってそのままだった」
唯が居心地悪そうだったのは、俺が上着を着てなかったからか。
彼女が寝ている部屋に着替えを取りに行けなかったせいだが、いちいち申し開きする必要もない。
「服着てくるよ。先に食べてて」
「……」
まだ気まずそうな唯は、こくんと頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!