黄昏時を待たずに

3/26
前へ
/53ページ
次へ
 俺は半ば異邦人と化していた。  ルフトハンザ機から降りた瞬間、日本はこんなに暑かったかと思ったくらいだ。  何年も海外にいると、懐かしい祖国の空気にすらわずかな違和を覚えてしまうのだろうか。  郷愁にひたる前に、すぐ国内線に乗り換えて関西に移動する。  今後のために済まさねばならない用事があった。  いわゆる就活だ。  当然、稼ぎがいるからな。  履歴がどこまで通用するかわからないまま警備会社大手、RC社で面接を受けて二日後、スマートフォンに採用通知が届いた。  面接時に口約束は済んでいたが、正式に再就職だ――配属先が決まったら、そこで住み処を探すつもりでいた。  米国本社で採用試験を受けても良かったが、何せ治安が悪い。しばらくの間は比較的安心できる場所で過ごしたかった。具体的には、銃なんかで武装しなくていいところで。  ……弱みが入ったな、俺も。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加