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翌日、汗だくで目覚めた。
「――……」
採光窓から見えた空はどんよりと重く暗い。
この滅入る目覚めは天気のせいだなと決めつけ、深々と息をついて起き上がった。
家の中は変わらず静かで、二階のお客が起きている気配はない。
いつもなら走りに行くところだが、今の状況で着替えを取りに入ったら間違いなく痴漢扱いされるだろう。
朝の日課を早々に諦め、まずはシャワーを浴びることにした。
熱めの湯でさっぱりとしてから、朝食作りだ。
また笑顔で食べてもらいたいなという下心もあって、朝食はサラダと、甘さ控えめのパン・ペルデュにしようと決めていた。別にソースを作っておけば、もう少し甘味が欲しいと言われてもそれで補える。
コーヒーを淹れる傍ら、特製卵液に浸して一晩冷蔵庫で寝かせたパンを取り出す。
焼くだけとはいえ、バターの量には気を遣う。味がしつこくならないようにしなきゃ。
バターが泡立つスキレットの中にパンを入れると、じゅうといい音がした。
これなら、ゲストに喜ばれる出来になりそうだ。
縁と表面をカリッと仕上げたパン・ペルデュとフルーツを和えたヨーグルトサラダをこしらえ、起こすべきかと頭を悩ませた――瞬間、二階のドアが開く音がした。
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