Day 2

4/12
前へ
/53ページ
次へ
ベッドはほとんど乱れていなかった。あの寝起きの様子だと、わざわざ直してくれたとは考えにくい。 寝相のいい子なんだなと余計なことを考えつつTシャツを着て戻り、唯の向かいに座った。 「いただきます」 「いただいてます。――ん」 俺が戻るまで手をつけていなかったようだ。パンを一口かじった唯が目を見開き、唸った。 「口に合うかな」 「美味しいです、……気のせいかな、ほんのりと柑橘系の香りもして……お店で食べてるみたい」 正解だ。 卵液にはレモンとオレンジの皮を浸して香りを移している。 「んー……、これもうま……美味しい」 ヨーグルトサラダを目を閉じて味わっていた唯が、突然真剣な顔で言った。 「長塚さん」 「ん?」 「パンク、今日で直してくださいますか」 「ああ」 いかにも女らしい現実的な一面に興醒める。 「食後、すぐに取り掛かるよ」 「……ありがとうございます」 長らくお邪魔するのも申し訳なくて、と、彼女は目を伏せ、小声で付け足した。 俺は、ちっとも構わないけどな。 そう口にしかけて、やめた。 未だ警戒を解かない彼女に、いらない不安を掻き立てられるのも面倒だ。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加