黄昏時を待たずに

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 この広い部屋にいつも新人を連れ込むのかと訊いたら、彼女は「貴方が初めてよ」と答えた。  素晴らしい夜景が一望できる高層マンションの一室で彼女を抱いた時、日本人の女はいいなと思った。  肌に吸い付くようなきめの細かい白肌、シーツの上で揺れて波打つ黒髪、時折我に返って喘ぎ声を押し殺すしとやかさとか。  なんせ向こうの女は、いちいちベッド上でのリアクションが大きくて……。  今夜の相手がプロポーションも感度も抜群だったからか、久しぶりに楽しませてもらった――しかし当然、いい女ってのはただで男に身をゆだねないわけだが。  カチッ、という小さな音が聞こえて目を覚ます。 「ごめんなさい」気怠げな声。 「起こした?」 「……いや」  起き上がっていた局長が、火をつけたばかりらしい煙草の煙をくゆらせて俺を見つめている。  引き寄せた羽毛布団に覆われる魅惑的な谷間にさっきの興趣を思い起こす俺も、彼女と同様にベッドの背にもたれた。
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