3/8
前へ
/61ページ
次へ
(・・・・・・どうして)  もはや枯れたと思っていた涙が睫毛や頬を凍らせる。  どうして、こんなにも人の世は辛いのか。無情に命は失われていく。  どれほど泣いても祈っても、・・・・・・ままならない。  生気の絶えた家を出てからずっと、彼女は歩き続けている。  幼い身体は枯れ木のように痩せこけ、飢えと寒さで意識も朦朧としているのに、何が彼女を突き動かしているのか。  彼女自身にさえ、それはわからなかった。  ただ、何かに導かれるように歩き続け、とうとう一歩も動けなくなった彼女は、寂れた寺の前で蹲るように倒れた。  前世、風間涼香。今生、胡々(ここ)、六つを数える冬の日だった。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加