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「いやね、あの山にはそりゃあ恐ろしい化け物がおって、年がら年中、ひどく唸り声を上げていたんですがね。あのお坊様が山に登ってからこっち、ぴたりと止んだんですよ。こりゃあ、きっとあのお坊様が退治されたに違いないと、皆喜んでますよ」 「本当ですか!」 「ええ、良かったですよねえ」  ぱっと涼香の顔が輝いたのを、男は化け物が退治された喜びだと勘違いして、嬉しそうに頷いた。  しかし、涼香が喜んだのは、別の理由だった。 (三蔵法師だ。きっと三蔵法師が悟空を助けて仲間にしたんだ)  これならなんの心配もない、と涼香は安堵して両界山へと足を踏み入れたのだった。
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