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   ーー遠く、鐘の音が聞こえる。  ごふり、と口から溢れだした血が床に染み込む。もはや指一本動かせる力も無く、涼香(すずか)は床に横たわっていた。  彼女の細い身体は、倒れてきた本棚とその上に積み重なった天井や土砂に押し潰されている。すでに意識朦朧としつつも、彼女にはまだ息があった。 (苦しい・・・・・・)  濁った意識で涼香は思う。  突然大きな揺れがあり、何が起こったのか理解する間もなく耐えきれない痛みと衝撃が彼女を襲った。痛みのあまり泣き叫び、助けを求めても何も起こらず、もはや声も出せぬ有様となった。 (痛い。痛い、助けて、ごめんなさい。ごめんなさい、誰か、お願い助けて・・・・・・)  あまりの苦痛に何故か謝りながら助けを求め続けたが、やはり何事も起きない。 (誰も来てくれない・・・・・・お母さん、凉太・・・・・・)  一階に居たはずの母とまだ幼い弟を思い、涼香は自分の為ではない涙を流す。どうなっているのかを考えるのは、あまりにたやすかった。
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