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(・・・・・・山? いえ、岩かしら?)
そしてようやく辿り着いた先に見えたのは、尋常ではない大きさの岩だった。
岩の天辺辺りに何やら紙が貼られているようだが、高過ぎてよく見えない。とにかく声は何処から聞こえてくるのか、涼香は辺りを見渡しーー目を見張った。
それは、赤い髪の若い男に見えた。
うんうんと唸る男は地面に伏せ、巨大な岩にその身体のほとんどを押し潰されていた。
ああ、と涼香は息を呑む。
苦しい、痛い、辛い。いつかの苦痛が思い出され、彼女はとっさに男に駆けよった。
わかる。
この苦しみを知っている。
同じように潰されて、助けを求めても何も起こらず。
ああ、この苦しみを私は知っている。
(助けたい)
そう思い、岩に触れた。
(きゃあああ!!)
とたん、身体が千々に引き裂かれる程の激痛を受けた。
魂が、砕かれるーー。
「よせ! 俺の苦しみを引き受けるな!」
その瞬間、雷のような叱咤が彼女を岩から引き剥がした。
茫然自失の体で涼香は目を瞬く。
その彼女を、強い視線が射止めていた。
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