5/7
前へ
/61ページ
次へ
(・・・・・・山? いえ、岩かしら?)  そしてようやく辿り着いた先に見えたのは、尋常ではない大きさの岩だった。  岩の天辺辺りに何やら紙が貼られているようだが、高過ぎてよく見えない。とにかく声は何処から聞こえてくるのか、涼香は辺りを見渡しーー目を見張った。  それは、赤い髪の若い男に見えた。  うんうんと唸る男は地面に伏せ、巨大な岩にその身体のほとんどを押し潰されていた。  ああ、と涼香は息を呑む。  苦しい、痛い、辛い。いつかの苦痛が思い出され、彼女はとっさに男に駆けよった。  わかる。  この苦しみを知っている。  同じように潰されて、助けを求めても何も起こらず。  ああ、この苦しみを私は知っている。 (助けたい)  そう思い、岩に触れた。 (きゃあああ!!)  とたん、身体が千々に引き裂かれる程の激痛を受けた。  魂が、砕かれるーー。 「よせ! 俺の苦しみを引き受けるな!」  その瞬間、雷のような叱咤が彼女を岩から引き剥がした。  茫然自失の体で涼香は目を瞬く。  その彼女を、強い視線が射止めていた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加