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(ーー炎)  その視線に涼香はぎくりと身を振るわせる。 (炎の目だ)  男の両眼は赤く光る金色だった。  ぎらついたその目は、まるで冷たく燃え上がる炎のように鋭く、涼香は己の全てが暴かれるような恐怖にかられて身をすくませた。  先ほどまで感じていた親しみは一瞬で霧散し、残るは恐ろしさのみだ。  男の目が怖い。  飢えるかのような強い視線が怖い。  男が口を開く。  やけに尖った歯が見え、男が何事か口にしかけた時。  ーーごう。  再び目を開けていられぬ暴風が彼女をさらった。 (あああああ)  またしてもくるくると弄ばれながら涼香は彼方此方へ飛ばされる。  遠く、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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